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    書物の森へのいざない

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プチカンパニーの設立

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 プチカンパニーの設立

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はじめに
税金の支払いは、企業の「資金繰り」を悪化させる。なぜならば、利益の約40%をキャッシュで支払わなければならないのだが、会社の利益はキャッシュであるとは限らないからである。むしろ実際はキャッシュという形でないのが当たり前なのである。その利益は、「商品」という形になっていたり「設備」になっていたり、借金の返済になっていたりするのであから、利益=金がある、という図式にはならない。
しかし、税金は決算期後2ヶ月以内に「現金」で納付しなければならないので、会社としてはあらかじめ納税資金を都合しておかなければならない。つまり、納税資金のために新たに商品を仕入れることができず、または設備投資ができず、借金の返済どころか再び借入れなければならない事態も起こりえる。
確かに税金の支払いは国民の義務であるし、税金によって国がまかなわれていることを十分に認識しなければならない。しかし租税法律主義の中で法律に規定している以上に税金を支払うことを求められているわけではない。したがってルールの中で、反社会的なことをすることなく、適正な金額を納付していけばよいのである。
わが国の会社は、税金の支払いということに関してコスト意識が低いような気がする。確かに法人税等の支払いというのは、法的な性格からすれば「利益処分」なのかもしれないが、実際に経営をする立場から考えれば「コスト」(しかも税金の計算上「経費にならない」)という認識である。
その「コスト」である税金に関しては、他の経費のような厳しい管理を怠り、無計画に納税している会社が多く見受けられる。もう少し税金に対してもコスト意識を持ち有利な納税、攻めの納税をしていってもらいたい。そこで今回「プチカンパニー」設立のおすすめをしてみたいと思う。

プチカンパニーを作ろう
中小企業において本体の事業会社とは別に、資産の維持管理を目的とした会社(プチカンパニー)を持っておくと非常に便利である。プチカンパニーは、独自の利益を追求し上場公開を目指すという性格のものではなく、あくまでも本体の事業が会社運営や資産管理、事業承継などを有利に運べるように援助をする会社である。
具体的にプチカンパニーを持つと次のようなメリットがある。(1)ソンだし(2)所得の分散(3)生命保険の加入と事業承継(4)接待交際費枠の拡大(5)消費税対策などがある。
(1)ソンだし
バブルの頃に買った土地や建物など現在の評価が当時の10分の1になっているところも珍しくはない。税務上、「価格が下がった」というだけでは経費にはならない。含み益があった場合でも税を掛けないかわりに含み損があった場合でも税を減らさない、ということなのである。
法人税等の計算方法は、(税務上の利益-税務上の経費)×税率という式で税金を計算するので、税務上の利益が減るか、税務上の経費が増えれば税金の額が減るということである。しかし、その資産を保有している限り、実際の価値が下がったとしても税金を減らすということができないのである。
そこで、その土地や建物は使い続けたいが、価値の減った分税金を下げさせる方法はないか、と考えるとき、プチカンパニーが使えるのである。つまり、プチカンパニーに時価でその土地建物を購入してもらうのである。税法上、時価による売買は関連会社や特別な関係のある間であっても認められているので、例えば10億円で買ったものを1億円で売買してもそれが適正な時価であるならば、10億円から1億円を差し引いた9億円の赤字を計上することができ、約3億6千万円(9億円×40%)の節税になるのである。また、この赤字は1年間で使い切る必要はなく青色申告法人であるならば5年間に渡って赤字を繰り越せるのである。
実際に取引を行う際に問題になるのが、「プチカンパニーにはお金が無い」ということである。お金が無いのであるから当然にその資産を買うことができない、と考える人もいるかと思われる。
しかしこの取引は何も現金払いで行う必要は無い。「何年間に渡って分割払いをする」等の契約であっても所有権はその契約時に移動をしているのであり、分割払いはただ単に支払方法を規定しただけであるので所有権の移動には何等影響が無い。よって、契約時にその土地建物はプチカンパニーに所有権が移動しているので、本体の会社は損が確定したのである。その後、プチカンパニーがその土地建物を本体に賃貸借することによって売上を上げて行き、そこから未払い金を支払っていくのも一つの方法である。
売買する際に注意すべきことは、もともとの物件に銀行等の抵当権が入っている場合に、抵当物件を第三者に無断で売却すると企業が銀行から借入れているお金について期限の利益が喪失することも考えられるので、抵当に入っている物件に関しては事前に銀行等と相談をしてから実行したほうが良い。また、契約書の記載の仕方、未払い金の支払方法など種々デリケートな部分もあるので専門家のアドバイスは不可欠である。

所得の分散
現在の税法の規定から言うと所得を分散していると税金が安くなるのである。資本金が1億円以下の中小法人の場合、所得が800万円以下は22%、800万円超が30%である。所得が1000万円の場合、所得を分散させないと236万円(800万円×22%+200万円×30%)だが、500万円ずつに分散させると220万円(500万円×22%×2)となり、16万円も税金が安くなる。
所得の分散方法としては、事業部で別法人を作るとか店舗ごとに法人成りをするなどが考えられる。

生命保険の加入と事業承継
生命保険は、個人でかけるとその控除額が5万円しかない(年金分として後5万円あるがトータルでも10万円)。それ以上の保険料は、税金を支払った後のもので拠出してください、ということである。
例えば、生命保険料を月額3万円(年額36万円)支払っている場合、生命保険料控除は5万円であるので、残りの31万円は税引き後の所得でしか支払うことができない。
ところが、法人で生命保険に加入する場合、保険のかけ方によっては全額経費に計上することができるもの、支払った保険料の半分だけ経費に計上できるものなど種類があるが、個人で掛けるように定額で5万円の控除ということはなく、圧倒的に法人で生命保険に加入することが有利な場合が多い。
プチカンパニーを持っていれば一社で入りきれなかった保険も加入できることもある。
また、万が一契約者が亡くなってしまった場合、個人契約であると相続税法上の「生命保険料控除」(法定相続人一人につき500万円まで非課税)しか使えないが、プチカンパニーをかましていることにより、もともとの法人からのものに加えてプチカンパニーの分も含めて、法人から遺族に対して弔慰金名目(給与の6か月分まで相続税非課税)で支払うことができ、かつ退職給与もあわせて支払う(法定相続人一人につき500万円まで非課税)ことができるのである。
以上のように、生命保険の場合、保険料を支払っているときも保険金を受領する場合にもプチカンパニーをプラスしたほうが得になる場合が多い。
ところで、事業承継に関しては、筆者のところにも多く質問が寄せられることの一つに、「どうやったら、相続対策として会社の株式評価を下げられるか」というものがある。これに関しては各会社各家族でそれぞれの個別的事情があるので一概に言えないが、相続対策としてだけで企業の価値を下げるのは私見として反対である。たしかに「逆さ合併」などマイナスを持った会社と合併するなど評価を下げる方法は存在するかもしれないが、いざ資金が必要だというときに、下がってしまった企業価値では融資などを受けられなくなってしまうこともある。株式を分散して出資比率を下げるという方法もあるかもしれないが相続対策よりも株主対策に忙しくなってします虞がある。それよりも最大の相続対策は、納税や遺産分割を容易にするためにキャッシュを持っておくことである。もし、今の事業が順調で将来の相続に不安を持っているならば、厳密に計算した上で生命保険等に加入しておいてキャッシュを持つことが一番の対策になるのではないだろうか。

接待交際費枠の拡大
税法上、接待交際は冗費であると捉えているので原則的には経費に算入できないことになっている。例外的に資本金5000万円以下の中小法人には接待交際で使った費用の80%までの費用を400万円という枠の中で認められている。
事業の種類によっては、400万円という枠などすぐにオーバーしてしまうものもあるし、接待交際の良し悪しが事業の遂行上非常に大きなウエイトを占めるものもある。このように、事業の種類によって異なるのに一律に枠を設けられているため、一つの会社でそれを拡大することができない。そこで、別法人をつくることで結果として接待交際の枠が広がることとなるのである。

消費税対策
プチカンパニーを資本金300万円の有限会社として設立した場合、その会社は2年間消費税を払う必要がない。この規定を利用すると次のようなことができる。
現在の法人の売上高が1億円で経費はすべて人件費(5000万円)であったとすると、この会社は消費税を500万円(1億円×5%)納めなければならない(人件費は消費税法上の経費とはならない)。ところがプチカンパニーを設立して人員をすべてそちらに移転させ、現在の法人から外注としてプチカンパニーが依頼を受けた場合、消費税の納税額は(1億円×5%-5000万円×5%=)250万円となる。そして、プチカンパニーは設立後最大2年間は消費税の納税義務が無いので、本来支払うべき消費税分は雑収入として法人内部にとどまることとなる。

中小企業経営者自身の所得分散としてのプチカンパニー
中小企業の経営者は事業以外にアパートやワンルームマンションを所有していることもあるし、店舗や事務所、社員寮など自己の不動産を会社に貸し付けている場合も多い。この場合、経営者個人にとってこれらの賃貸料は税率が非常に高いものである。なぜならば、所得税は超過累進課税という制度を採っているので、1000万円の給与所得があったとすると、その上に不動産の賃貸収入が500万円加算されたとすると、その不動産の収入には30%(住民税を入れれば43%以上)の税率が掛けられてしまうのである。
この最後の500万円について所得を分散させ、例えば、不動産の管理を目的とし、奥さんを社長としたプチカンパニーを設立するのである。そして経営者が持っているアパートやワンルームマンション、企業に貸している店舗や事務所、社員寮などをこのプチカンパニーに賃貸するのである。その後、プチカンパニーが貸主(転貸人)として店子と賃貸借契約(転貸借契約)を締結するのである。
ここで重要なことは、ただ単に転貸借を承認して、あいだにプチカンパニーを置くだけでは、どんなに頑張って「不動産の管理をしているのだ」と主張しても、せいぜい賃貸金額の20%未満しかプチカンパニーに渡すことはできない。20%といっても、それだけの管理の仕事をしているという実績が無ければ、当然認められないし、その証拠をバッチリ残していたとしても、普通の不動産管理料(普通の不動産屋さんや管理会社にまかせたとしたならば)賃料の5~7%程度であるので、それ以上の賃貸管理料は税務調査の段階で否認されるおそれがあると言わざるをえない。
では、どうすれば良いかというと、一つの方法としてプチカンパニーが本人(家主)に対して「家賃保証」をする契約を結ぶのである。「家賃保証」はご存知のとおり空室であろうが、満室であろうが、一定額の家賃を支払うシステムである。これを使って確実にプチカンパニーに一定の金額が渡るようにするのだ。
具体的には、図にあるように、家主はプチカンパニーに21万で貸し、プチカンパニーが月額30万円で店子に転貸するのである。このような形にすれば、プチカンパニーに9万円残り、ここから社長の給料等を支払うことにするのである。社長の給料を8万円にし、雑費を1万円以上計上すれば、プチカンパニーには利益が残らないで、税金は住民税の均等割だけ(法人があるということにかかる税金)の7万円ですむことになるのである。
社長の給与が8万円であるということは、それ以外に所得が無ければ、年間で96万円が総所得金額となる。これに対してダイレクトに税がかかるのではなく、給与所得者には、給与所得控除というものがあり、所得金額から最低でも65万円を差し引くことが出来るので、この社長の所得は96万―65万=31万円となり、ここから基礎控除の38万円を差し引くと所得が0となってしまうので、税金は掛からない。
給与所得控除は、サラリーマンやアルバイト・パートの主婦だけでなく、役員も給与所得者である限りは使えるのである。
このケースでは、本人(大家)に関して言えば家賃30万円のうちの9万円分について所得税がかからないようにすることが出来る。1年間でトータル108万円について税金がかからないわけである。このことは、所得金額が1000万円超の人の場合、税金の額で約43万円節税することが出来ることになる。10年間で430万円も違うのである。法人が大家の場合でも、税額で32万円の節税となる。
ところで、空室が出てしまった場合には、プチカンパニーは本人に対して家賃を支払う義務は生じ続けている。しかし、実際には未払いになってしまっても税務上問題ないのである。なぜならば税の考え方では、プチカンパニーが家主に家賃を実際に支払っているか否かは関係が無く、支払う義務が発生した時に経費に計上すべきものだからである。
このケースで考えると、プチカンパニーに物件の所有権の移転や名義の変更などの煩雑な手続きは一切必要ないのである。新規に物件を購入する場合だけではなく、現在の所有形態を変えることなく合法的な所得の分散が可能なのである。

おわりに
融資の枠や助成金の枠が増えるなどまだまだプチカンパニーを作るメリットは存在するが、自己責任で慎重に対処してもらいたい。税務調査などでの多くの否認事例は、納税者が自分に都合のいい解釈しかできず客観的に判断できなかった場合が非常に多い。
自分や自分の会社のことを本当に考えてくれて、最大の効果とリスクの説明をしてくれる専門家を早く見つけることである。「ダメだ」「できない」しか言わない専門家はあなたの会社では必要ないのかもしれない。それよりもどんどん提案をしてくるブレーンを持つことで会社が着実に進歩発展していくのではないだろうか。




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